2012年11月25日日曜日

【続ラベンダー×カモミール】キミノタメ





「じゃ、バイト行ってくるね」




「うん。いってらっしゃい」


私とカモミールは、現在同棲中である






交際してからほとんど半同棲状態だったけど、
やっぱりきちんとしないとね。ということで、同棲を申し込んだのだ。
カモミールはうれしそうに、少し恥ずかしそうに頷いてくれた。


カモミールとの新しい生活をスタートさせるために、私は新居を買おうとした。
使わない部屋がいっぱいあるのにもったいない!とカモミールは私を叱った。
叱られた私は家を掃除した。

カモミールは嬉々として、自分の荷物を持ち込んできた。
私はカモミールの荷物を置くために、私物と家具を全て捨てた。
がらんどうになった部屋を見て、カモミールはまた私を叱った。

そして、二人で、新しい家具を買いにいった。





ふたりは毎朝同じベッドで目をさまし、
同じものを食べ、同じものをみて微笑み、抱き合いながら眠った。

まるで産湯に浸かっているかのように、まろく、穏やかな日々だった





隣に眠る愛しい人の顔を見ながら、私は毎夜、永遠を願った。




そして今日も、仕事に行く彼を見送ることができる、というしあわせを噛みしめる。
離れ離れになってしまうのは大嫌いだが、「いってきます」と「いってらっしゃい」を言い合えるだなんて
まるで結婚しているみたいだ。自然と頬が緩む




バイトに行く前のカモミールって・・・ちょっとえっちなんだよなぁ。
邪な思いが頭をよぎり、馬鹿みたいににやついてしまう




「ラベンダー・・・なにか変なこと考えてるでしょ」

「あ、わかった?ふふ、ちょっとえっちだなぁって。」


「えっちって・・・何が?」

「バイト前のカモミール。」

「どこが!?」

「・・・ナイショ。」


「・・・はぁ、もうー!ラベンダーったら・・・!」


私の邪な思いを読み取ってしまったのか、カモミールは心底呆れた様子だった。
呆れ顔もかわいい。私は更ににやにやとする。

そんな私をちらと見つめたカモミールは少し笑って・・・
ふと、うつむいた。




・・・・なにか、あるな。

こういう仕草をするときは、何か言いにくいことを話そうとしている時だ
私は、カモミールのことならなんでもわかった。


「どうしたの?」

「・・・」


「何か言いたいことがあるんでしょ?」





「・・・・うん」

「言ってごらん?」




「・・・・・・今日、バイトの同僚と飲み会があるんだ」









「そのっ・・・行けないって言ったんだけどっ
「全員強制参加でしかたなく・・・・俺は、別に行きたくないんだけど・・・!」




「あのっ・・・・い、行っても・・・・・いい、ですか・・・?」

カモミールはそう言って私の顔色を窺った。
額に汗を浮かべ、どこか怯えた瞳で


どうしてそんな顔をするの?




・・・怒ったりなんか、しないのに。

「行っておいで」


「え・・・?」




「・・・行っても、いいの?」

「もちろん。」


「・・・!」

「あ、ありがと・・・!あの、ちゃんと報告するから・・・
「お酒も飲まないし、あんまり絡まれないようにするから、だから・・・」

「報告、なんていいよ。」

「えっ」




「いらないよ。私、カモミールのこと信じてるから。」





「ラベンダー・・・!」





「ありがとう。俺のこと、信じてくれて・・・・・・・・・!
「うれしい・・・・!うれしいよ。ラベンダー」




「ううん。今までがおかしかったんだよ。誰と会うにも逐一報告するだなんて。
「こんなにかわいい子を縛り付けるなんて」

「ラベンダー・・・」


「ふふ。」




「・・・バイト、行かなくていいの?」

「あっ・・・そろそろ行かないと遅れちゃう・・・ね!いってくる」


「・・・行ってきますのチューは?」

「・・・えっ」




「行ってきますのチューは?」





「あ・・・えっと・・・」



カモミールは一瞬困ったように笑い・・・優しいキスをしてくれた。









「・・・んっ・・・・」

吸いつくようなやわらかい唇。
齧り付くかのようにしゃぶると甘く震え、
もっと、もっと、と私に哀願するかのよう


カモミール・・・っ


たまらなくなり、更に深く口づけようとすると
カモミールは私の胸をそっと押し、逃れようとする。




「だ、だめだよ・・・!俺、もう行かないと・・・
「続きは、帰ってきてから・・・ゆっくり、ね・・・?」




「・・・・絶対だよ?」

「うん・・・・っ」


あんまりゴネるとまた叱られちゃうから・・・
今は大人しくイイコにしててあげる。


カモミールは私に嘘をつかない
だから、どんなに寂しくてもイイコで待ってられる。

カモミールは私だけをみてくれている

だから、大丈夫


大丈夫なんだ


信じてるよ















カモミールが居ない時、私の世界はとても停滞している。
全てが色あせ、ひどく歪んで見える。

二人で暮らし、二人で過ごしていた時間があまりにも麗しすぎて
もう一人でいられそうになかった。離れていると不安でしかたがなかった。
『待っている』のはあまりにも苦痛だった。

彼が、彼だけが私を彩ってくれる。彼だけが私の世界の中心。彼だけが私のメシア。




はやく帰ってきて・・・・

何十回、何百回と時計を睨み、床に頭を打ち付ける。
このまま溶けていってしまいそうだった




早く、早く帰ってきて。

私のもとへ帰ってきて。

早く、早く、

帰ってきて、くれるんだよね?

早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、



その時、ふと、足音を感じた




カモミール!?

私は飛び起き、窓辺へ駆け寄る。




やっぱりカモミールだ!

窓の外に愛しい人の姿を見つけて窓枠にしがみつく。
帰ってきてくれたことに心の底から安堵し、喜びで胸がいっぱいになる

・・・しかし





カモミールは誰かと電話しているようだった。












電話なんかよくすることじゃないか
動揺するだなんて大人げない。きっとバイトの同僚からのものだ




「ただいま、ラベンダー!」





「おかえりなさい。」




大丈夫


きっとなんでもない。


だって私はカモミールを信じているんだもの。
大じょうぶ

カモミールは私に嘘をついたことなんて、一回もないんだから








でも、
私、カモミールのことが心配だよ

だから、少しだけ君のこと、見守らせて?












なんだ。電話はバイトの同僚じゃなくて、あの男にしてたんだね。





妬けちゃうな





















































どうしてあの男といっしょにいるの?
どうしてあの男に会いに行ったの?
どうして泣いているの?

あの男が・・・カモミールを・・・・・泣かせたの?






「しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね














「あれ、ラベンダーどうしたの?スーツなんか着て」
「今日ってたしか、お仕事お休みだったよね」




「ん?ちょっと都会に用事があって。」


「そっか・・・」

「さみしい?」




「さみしいけど・・・ガマンする!いってらっしゃい」

「いってきます。」










カモミールはイイコだなぁ。
あんな男に泣かされてしまったのに、一人で耐えて・・・がんばって・・・

私にナイショにしてたのは、心配かけたくなかったからなんだよね?
えらいなぁ。

だから、好かれちゃうんだよね。いろんな人に




カモミールはあまりにも素敵すぎるから
誰だって君のこと、好きになっちゃうんだよね。

そして、一度好きになったら
思いきることなんて絶対にできやしないんだ。


君は自分の魅力に鈍感すぎる





また何かあったら大変だし
君を危ない目に遭わすなんて嫌だから


私が気を付けてあげないと




私がなんとかしないと






だって私は


カモミールの恋人なんだから














そして


私はナイフを振り上げた。






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