2013年2月12日火曜日

【続ラベンダー×カモミール】いじわるな君が好き【R-18】




ラベンダーとの同棲生活は
毎日が発見の連続だ。











だって、想像できただろうか?
あのラベンダーがまるで主婦のように洗濯物を集め、洗い、手早く片付けるところを。
麦わら帽子を付け、まるで農夫のような格好で庭の手入れをするところを。
お風呂上りにくつろいだ様子で牛乳を飲むところを。

同棲するまでは知らなかった生身の彼。彼の生活。




寝起きを共にする、たったこれだけで、こんなにもたくさんのことを知ることができるなんて・・・!なんて、贅沢なのだろう

宝箱をひとつひとつ開けていくかのような毎日に心が躍る。
今日はどんなことを知ることができるだろうかと考えるだけで胸がいっぱいになる。
共に生活を重ねるごとに彼に近づくことが出来るような気がして・・・・毎日本当に嬉しい。

・・・・しかし、彼との生活はうれしい、楽しいだけではない。
俺は彼といると、時にひどく落ち込み、憂鬱だとすら感じてしまうことがある


___彼は、完璧すぎる。


どんなことだって、俺よりもより短時間で、より素晴らしい出来映えに仕上げてしまうから
彼と生活しているとどうしても自分の落ち度ばかりが目についてしまって、申し訳なくてたまらなくなる。

それが顕著に出てしまうのが掃除と料理だ




彼はとても綺麗好きで、いつも神経質なほど掃除をしている
特に水回りの掃除が好きなようでトイレなんて顔が映るくらいピカピカにしてくれるのに・・・・

俺は掃除や整理整頓といった類のものが大の苦手で
気が付いたら物をそこらじゅうに放置してしまう。しかも、放置したことを忘れて別のものを出そうとしてしまうのだから始末が悪い。

だから、毎日『出したら仕舞う』を頭に叩き込んで生活しているのだけど
やっぱり、完璧に出来ないことが多くて・・・・自己嫌悪に陥ってしまう


料理だってそうだ。

一応、独り暮らしをしてはいたため、包丁すら握ったことがないというわけではなかったが、
幼い頃はずっと母親に食事を作ってもらっていたし、寮に住んでいたころは寮母さんに食事を用意してもらっていた
そんな俺が・・・人様に食べさせられるようなものなんて、作れるわけがない




そんな俺とは違って、ラベンダーはとても料理が上手で・・・・シェフ顔負けの繊細な料理を作ってくれる。

お肉を甘酸っぱい果実のソースで焼いた、ジューシーな・・・・ステーキ?ローストビーフ?何か美味しいお肉。
ヒラメとポテトをほくほくに煮て、まろやかなトマトソースのスープに浸した・・・スープ?和え物?
そして、俺が大好きな、甘くて、瑞々しいストロベリータルト

いつもいつも、惜しみなくサーブされる美しく美味しい料理の数々に、もはや感動すらしてしまう。
彼はそれほどまでに素晴らしい料理の技術を持っていた




だけど、ラベンダーは___食事をすることがあんまり好きじゃないみたいだ


そもそも彼は成人男性にしてはかなり食が細い。

自分ひとりのときは何も食べずに、何かよくわからないものを混ぜ合わせて作ったジュースを一杯だけ飲んで
何も食べずにいる、なんてことは当たり前だった。
しかもそのジュースはあんまり美味しくない。

きっと、いろいろ健康的なものが入ってるんだろうけど・・・・
そんなものばかりじゃ、逆に身体によくないよ・・・・




だから、俺が料理を用意してあげる


俺の料理は彼の料理には全然敵わない。ラベンダーには全然敵わない
でも、彼は・・・・俺が作ったものはどんなに形がいびつでも、見た目が悪くても、かならず残さず食べてくれる
嬉しそうに「ありがとう」と言ってくれるから・・・・・

うれしくて、ほっとする
ちゃんとご飯を食べてほしい。栄養のあるものをきちんと食べて、ずっと健康でいてほしい。

彼は俺よりも年上で、大人の男性なのに、どこか危うく、儚げなところがあって・・・・
いつかふっと消えてしまうんじゃないかと不安になる

俺はその不安をこうすることで解消しようとしているのかもしれない
食べ物から。内側から彼を変えようとすることで・・・・


もちろんそれだけではない。


___彼のために何かをしたい


好きなんだ。彼のために何かをすることが。
優しげで、寂しげな彼の笑顔を見ると何でもしてあげたくなる。俺ができることならなんだってしてあげたくなる




「・・・と、量はこれくらいでいいかなぁ」

食材を切り分けて、ふうと吐息を吐く。普段はパンケーキやスクランブルエッグといった非常に簡単なものしか作っていなかったが
今日はキッシュに挑戦するつもりだった。__ラベンダーがレシピの本を見ておいしそうだと言っていたからだ。

自分の生活はとことんラベンダーを中心として回っているなあと思い至り、少し苦笑してしまった。


(喜んでくれるかな・・・・?)


レシピ本みたいに上手く作ることができたら、どんな顔をするだろう
驚くだろうか?

きっと、おいしそうに、嬉しそうに食べてくれることだろう・・・・・





そんなことを考えながら目を閉じ、頭の中に思い描く


____俺の作った料理を食べる彼の姿を







重たげな睫毛を震わせて微笑む彼。


白くしなやかな手指でシルバーを操り、食材に口づけをする
キスに恥じらう食材たちは見る間に汁を滴らせ、彼に食べられようと誘う

しかし、男はそんな者たちにちらりと目線を送り・・・・紅い液体を先に口に含んでしまう
誘いをかわされてしまった食材たちは焦れて、更に蜜を溢れ出させる

もどかしげな彼らを見て、男は嫣然と微笑み、やっとシルバーを口へと運ぶ。




歓喜に打ち震える食材たち

白桃のように艶やかな唇に運ばれ、慎重に咀嚼される。
男らしいのにどこか繊細なラインを構成する喉がこくりと動き、食材が奥へ流れていく

それを見届けた男は、その感触に陶酔するかのように目を細める。
それは、はっとするほど官能的で、美しい・・・・・

そんな様を見せつけられてしまったら
俺はきっと、彼に目を奪われてしまい、食事なんてできないに違いないだろう
シルバーを彷徨させるかのようにして、ただただ彼に魅入ってしまうだろう


そんな俺に気付いた彼は、きっと・・・ふわりと微笑み____








ゆっくりと唇を舐め、俺を見つめるのだ。

淫靡だとさえ思えるほどの色香を湛えながら・・・・


その瞳を受けた俺は、びくりと躰をわななかせ、悦びに打ち震えるだろう


その瞳が、俺だけに向けられているということ
俺が作ったものが、俺の一部が、彼を構成する物質の一端を担うことができるのだということが


嬉しくて__嬉しくてしかたがない






(俺も___

(俺も、彼に食べられてしまいたい・・・・・)


突然激しい感情が湧きあがり脳髄が痺れる。
____その眩暈がするほどの欲望。陶酔。羨望・・・・うっとりと睫毛を震わせてしまう


彼のやわらかな唇に食まれ、歯で千切られ、
喉の奥の奥まで入れられ、熱い体液にどろりと溶かされて___

彼の躰の一部になってしまいたい
溶け合って、混ざり合って、ひとつになってしまいたい


倒錯的な妄想にこめかみがどくどくと脈打つ
躰がじんと熱くなり、荒い吐息を抑えきれない。たまらずカウンターに手を付き、身をかがませると

「・・・っ」


確かな感覚を自覚してはっと我に返る

・・・・俺の躰はそんな妄想をしただけで、反応していたのだ




「・・・・うう・・・・っ」

頬が羞恥で熱くなり、思わずしゃがみこんでしまう
すると、下着が押し上げられる感覚をつぶさに感じてしまい・・・・泣きたくなってくる

ラベンダーが食事をするところを思い浮かべて勃起させたなんて、彼が知ったら引いてしまうに違いない。
だって、こんなの、普通じゃない。おかしい。___きもち、わるい・・・・




「・・・なにしてるんだ___俺・・・・・」







妙な想像をしてしまったからだろうか
あれから躰の熱がなかなか取れず、何度も何度もイヤラシイ想像をしてしまった

そのたびに手ひどく失敗してしまい、食材をいくつも無駄にしてしまったが
なんとか気分を切り替え、後は加熱するだけで完成といったところまで調理を終えた頃__

"ラベンダー専用ではない方"のスマートフォンがふるりと震え、着信を教えた。



慌てて手を洗い、画面を見るとバイト先の花屋からの着信だった。


「はい。お疲れ様です。・・・・・・え・・・?これから、ですか・・・・?

「はい・・・・はい」





電話を終えてはぁとため息をつく。
__臨時で呼び出されてしまった。

着信を受けた時からなんとなく悪い予感はしていたが、いざ予感が当たってしまうとやはり憂鬱な気分になる。
しかし、そうはいっても行かないわけにはいかない。急いで食材を冷蔵庫に入れ、身支度をする。

キッチンがかなり散らかっていたが・・・

今日はラベンダーは都会に行くと言っていたので、きっと俺の方が帰りが早いだろう
早く帰ってきて片付ければいい

俺はそう判断し、急いで家を飛び出した。

















「・・・ただいま」




「あれ・・・・・カモミール・・・・?」


























「はぁ・・・・」

___疲れた

なんだかんだと雑用を押し付けられて4時間も拘束されてしまった。
その分お金がもらえるからいいんだけどさぁ・・・・

俺は無理やり自分を納得させると、自転車を停め、玄関へ脚を向けた




(あれ・・・・?)


と・・・・エントランスへ続く扉から灯りが漏れているのを見つけてどきりとする


俺は出かけるときに電気を消していったため、灯りがついているなんてことはありえない
と、いうことはラベンダーが帰ってきているということで・・・・




彼が先に帰っているということは、あのキッチンを見られているということだ。


そう思い至った俺は、荷物を置くことも忘れてキッチンへ走った。


ラベンダーは綺麗好きだ。

今まではなんとか我慢していてくれたかもしれないけど、
あんなに散らかったシンクやカウンターを見られたら・・・・・今度こそ失望されてしまうかもしれない。
だらしないやつだと思われて呆れられてしまうかもしれない。

___嫌われてしまうかもしれない


それだけは死んでも嫌だった。




急いで片付けようと走った俺はキッチンの有様をみて項垂れた

あんなに大惨事になっていたシンクやカウンターは綺麗に磨かれ、
使用された道具は全て元の場所に戻されていたのだ。

遅かった・・・・




「おかえりなさい。カモミール」

「あっ、あっ・・・・!ただ、いま・・・ラベンダー」

突然声が聞こえてきて、どきりと心臓が跳ねる。
いつの間にそばに来ていたのだろう。彼はまるで影のようにするりと近づいていた。

「あの・・・・キッチン、片付けてくれたの?」

「うん。」

おずおずと問いかけ、やっと彼の目を見つめる。




彼の瞳には侮蔑の色も、失望の色も浮かんではおらず、いつも通りだったが____
それが、余計に怖い。

まるで、何も映していないかのような、その目が、こわい・・・・・




「ごめん・・・」

「えっ・・・・?」

「あんなに散らかしちゃって・・・ごめんなさい。
「俺の方が先に帰ってくるかと思って、後で片付けようかと・・・そのままにして出かけちゃった・・・

「バイトで急に呼び出されて急いでたんだ・・・・ごめんね・・・」




俺はやっとのことでそう言うと、彼の色素の薄い澄んだ瞳を縋りつくかのように見つめた。
赦してくれるだろうか

怒られても、何をされてもいい。だから、どうか__赦してほしい。
見放さないで・・・・

それが、何よりも怖かった。








「よかった・・・・無事で」

「え・・・?」

「真っ暗なのに、キッチンが滅茶苦茶になっていたから、君が連れ去らわれたんじゃないかと思って
「心配してたんだよ?」

ふうとした吐息が睫毛にかかり、ぴくりとして瞬きをすると、俺の大好きなあの優しい笑顔が目に飛び込んできて・・・・
思わず問うように視線を投げかけると、まろく、やわらかな声が俺の鼓膜を震わせた。

「・・・・怒って、ないの?」

「怒る?」

「だって、俺・・・・あんなに散らかしたまま、家を出ちゃったんだよ?」

「カモミールってば、そんなことを気にしていたの?ふるふる震えてるから何かと思えば・・・・おおげさだなぁ」

「な・・・おおげさって・・・!」




「気にすることなんてないのに。
「好きだから、気にしないよ。こんな、キッチンがちょっと汚れてたくらい。別にいい。」

「・・・ラベンダー・・・・」

「もっと汚してくれたっていいくらいだよ。」

「カモミールがお掃除がニガテだって言うのなら、君のために綺麗にしてあげる。
「どんなものでもピカピカにしてあげる」




「私はなんだって、できるよ。

「カモミールのためだったら、なんだってしてあげる。してあげたいんだ」
「どんなことだってね」




「・・・・っ」


____俺と、同じだ

相手のためになにかしたい。なんでもしてあげたい
お互いにそう思っていたんだ・・・・

胸にじんわりと喜びが広がる

赦してくれたことがうれしい。好きだから、と言ってくれたことがうれしい。
俺の全部を認めてくれているようでうれしい。同じ気持ちを持っていると知って、うれしい。
彼に愛されて___うれしい。

たまらず、そっと指を伸ばすとふわりと抱き留められた。




広い胸に顔をうずめると心の奥からあついものがこみあげてくる


好きだ。彼のことが好きだ。

こういうところが、大好きなんだ


「ありがとう・・・・ラベンダー・・・・」











食事を終え、ゆったりと寄り添う。
掃除をしてくれたお礼に俺はキッシュを振舞ったが、それは妙にぱさついていてあまり美味しいものではなかった。

だけど、ラベンダーはずっと嬉しそうに目を細めていてくれた。「おいしい」と微笑んでくれた。
それだけで、おなかがいっぱいになってしまう

優しい気持ちがじんわりと湧きあがり、そっと目を閉じると、ひやりとした感触が唇に触れる。
不思議な感触に目を開けると、黒い指先が俺の唇を弄ぶように撫でていた




「あれ・・・その手袋、どうしたの」

「ああ、これ?猫に引っかかれちゃってね。化膿しないように薬を塗っているから、つけているんだ。」

「そうだったんだ・・・大丈夫?」

「全然大丈夫だよ。
「でも、私はただ、遊んであげようと思っただけだったのに・・・ひどいよね?」

それほどひどいケガではなかったようで安心する。
・・・でも、ラベンダーも、猫と遊ぼうとしてひっかかれちゃうことがあるんだなぁ
その光景を思い浮かべると、あまりにも微笑ましくて・・・・ひどいとは思うのだが、思わず笑ってしまう。

「どうして笑うの?」

「だって、ほほえましくて」

「微笑ましい?」

「うん。ラベンダー、都会に用事って言ってたのに・・・都会で猫と遊んできたの?
「いいなぁ。俺も猫と遊びたいよ」

「カモミール、猫好きなの?」




「うん。好きだよ。昔飼ってたんだ。とても綺麗な猫でね・・・・」

「____懐かしいなぁ」


懐かしさに思わず顔を綻ばせる。
大好きで、大好きで、いつもいっしょにいたあの猫・・・・今ではもう、顔を思い出すことすら難しかったが
幼い俺にとっての大切な友達だったという記憶だけは燦然と輝いている。




「・・・・・・」

「ねぇ、それ・・・・ほんとに猫?」

「ん・・・?どういうこと?」





「だって、私と一緒にいるのに、そんな顔して・・・まるで愛しい人のことを想ってるみたい。」


「___えっ・・・・?」





冷たい声にはっとすると同時に強引に引っ張られ、彼の腕の中に囚われる。

「いたっ・・・・ラベ、ンダー・・・・!」

小さく悲鳴をあげ、ほとんど反射的に逃げようともがく俺を片手でいなし、
彼はじっくりと俺を見つめた。




まるで捕まえた獲物をじっくりと品定めするかのように、
躰じゅうを舐めまわされるかのような視線に羞恥を感じ、頬が紅潮する。

掴まれた腕が痛い。密着した躰があつい。顔に吹きかかる吐息が艶めかしい。

俺はなにか、彼を怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか
怒らせてしまったのなら、謝りたい。赦してほしいと切に願うのに・・・・

「・・・・・ラベンダー・・・・・・俺、そんな・・・・・・」


「・・・妬けちゃうなぁ」


囁くように紡がれる甘い低音に危険な色が灯り、びくりと震える

彼がこういう声を出す時は、何かに対して激しく嫉妬をしている時だ
感情のバランスを逸している時だ

なにをするか、わからない時だ




でも____なんて、艶があるのだろう


その声が好きだ。

掠れるようなウィスパーヴォイス。
いつも俺の肌を這うように撫ぜ、俺に不安と恍惚をもたらす声。

弁解をしなければならないのに、喉がからからに乾いて何も言えない。
汗がじっとりと噴出し、躰じゅうが朱に染まる
まるで聞こえてしまうのではないかと思うほど心臓の音がうるさい。息が苦しい。


「私以外を思い浮かべてあんな顔するなんて・・・・おしおきだよ・・・?カモミール。」

「・・・えっ・・・・」




突然襟元を引っ張られたかと思うと、唇が覆いかぶさってくる
あっと、驚く暇も与えらず唇を強引にこじ開けられ、熱く濡れた舌が俺の粘膜を乱暴に掻き回し、咥内を犯す。

「ん、っ・・・・」

息をすることすら赦されないほど、強引で情熱的な口づけと
むせかえるようなラベンダーのにおいに頭がじんと痺れ、麻痺していく____




「ラ、ベンダー・・・・」

銀の糸をひいて口づけが終わるころにはもう、息が上がってしまっていた。

躰の中心が痛いほど固くなっている
蜜がとろとろと滴り、下着を濡らしているのがわかる

口づけられただけなのにすぐに反応してしまう自分が情けなくて、恥ずかしくて涙が出そうになるのに
躰はひどく、正直で・・・・
気が付いたらねだるように躰を擦り合わせて、ラベンダーを見つめていた。

して、ほしかった




「うん?なぁに?カモミール。物欲しそうな顔して、どうしたの?」

「・・・・っ」

「言わなきゃわからないよ。」

意地悪な物言いに頬が羞恥に染まる。
わかっていてわざと言わせようとしているのだ。俺を辱めるために・・・

そう思うと恥ずかしくてたまらないのに、疼く躰を抑えることができない。
この熱を取り除いてほしい。その指で、その舌で、その唇で。ラベンダーによって与えられる意地悪で淫らな毒によって・・・・


「・・・・したい・・・・して?」


唇を震わせながら言葉を紡ぐと、ラベンダーはその形の良い唇をそっと綻ばせた
華が開いたような優美な微笑に思わず見とれてしまう

「じゃぁ、服を脱いで?」

しかし__ぴしゃりと冷たく言い放たれ、はっとする。

俺はこれから「おしおき」をされるのだ・・・・


恐怖と不安と期待と陶酔でぶるぶると震える躰を抑え、
ぎこちない手つきで服を取りさると、ラベンダーに乱暴に押し倒され口づけをされた。




「・・・っ、ん、う・・・・」




「ぁ、っ・・・はぁっ・・・・・」

何度も何度も口を吸われ、唾液を含ませられる。
舌を絡ませるぴちゃぴちゃとした水音が部屋に響き・・・それがひどく淫らで、俺をどうしようもないほど高ぶらせる・・・・

「んっ・・・・」

ひとしきり唇を合わせると、今度はつるつるとしたシルクの布地が俺の皮膚を撫でまわした。
冷たい感触が火照った肌に心地いい。

その感触に陶然としていると、ふいに乳首をぎゅっと抓まれ、鋭い痛みが走る。




「っ、痛い・・・っ!」

「こうされるのが好きなくせに。」

「ちが・・・っ!あ・・・・っ」

そう囁くと彼はまた乳首をぎゅっと押しつぶす。
びりびりとした甘い刺激に、俺は思わずくぐもった吐息を漏らしてよがった。




「やぁっ・・・そこ、触らないで・・・・」

たまらず制止の声をあげるが、ラベンダーはまるで聞こえていないかのように乳首を弄ぶ。
抓り、擦り、押しつぶし、舌でいじめ、含んで吸い上げる

まるで飴と鞭のような愛撫。痛いのに、気持ちがよくてどうしようもないほど感じてしまう。
びくびくと腰を揺らし、喘いでしまう
乳首で感じてしまうなんて女みたいで嫌なのに、ラベンダーはわざとそこばかり責めてくる

「はっ・・・あ、ぁっ・・・・!」

「カモミールは乳首を触られるのが大好きなんだよね。
「ここを弄られて、女の子みたいに喘ぐのが大好きなんだよね?」

「ちがっ・・・・」




「じゃぁ、ここがいいの・・・・?」

「ひぁッ・・・!」

彼はまるで嘲笑するかのように嗤うとそっと窄まりを撫ぜた。
くるりと円を描くように、弄ぶように触られ、ぞくぞくと打ち震えてしまう

意地悪で甘い責め苦にたまらなくなる
もっと、触ってほしい
ナカに突き入れてぐちゃぐちゃに抉ってほしい

なのに、彼はシルクの布地でするりとそこを撫でるだけで、ナカに触れようとしてこない
苦痛を感じてしまうほどのもどかしさに、俺は目から涙を溢れ出させた。




そんな俺を見つめて、彼は愉しそうに、うれしそうに言葉で嬲る
あの吐息交じりの妖艶な声が鼓膜に惜しみなく注がれ・・・頭が沸騰してしまいそうになる

「明るいから恥ずかしいところが全部丸見えだよ?こんなにグショグショに濡らして・・・ああ、ソファが染みだらけだ・・・・
「恥ずかしいね?ねぇ、カモミール」

「ううっ・・・・あっ・・・やぁっ・・・・」

「ふふ、カモミールのここ、ひくひくしてる・・・・どうして?」

「だって・・・・ラベンダーが・・・・んっ・・・・」

「え?私のせい?そんなことないでしょう?」




「カモミールのせいだよ。カモミールがそんなにいやらしい顔をして私を誘うから
「私のおちんちんがほしくてほしくてたまらないって顔をするから」

「そんな・・・・」

「ほら、またそんな顔をして・・・・・そんなに私にいじめてほしいの?」

「ああっ、ん・・・っ!」

ラベンダーはそう言うと窄まりをひっかくように刺激した。
何度も撫でさすられ、ラベンダーの男根を咥えさせられたそこは鋭敏になり
ちょっとした刺激を与えられただけで、ひくひくとナカを引き攣らせ、蠢かせてしまう

もう、やめて・・・・赦して・・・・
苦しくて、苦しくて、たまらない

ぴんとそそり勃った俺のペニスは触られてもいないのにぐちゃぐちゃに濡れそぼり、
ラベンダーの上質なシャツに蜜を落としていた。

____もう、我慢できなかった




「も、やぁ・・・・っ」

「ん?」

「ほしい・・・ほしいよ・・・ラベンダーぁ・・・!」

ほしい。ラベンダーがほしい
俺の内側をいっぱいに満たす、あの確かな充溢がほしい。
ごりごりと俺を抉り、悦楽の極みへと誘うあの逞しい男根がほしい

もどかしさで呂律のまわらない舌を懸命に動かして、何度も何度も切なげにねだる

「もう欲しくなっちゃったの?でも、私、手を怪我してるから手袋を外せないんだよね」




「___だから、自分で解して?それまで私、見ててあげるね」


「・・・・っ、じ、自分で・・・・?」

「そう。自分で解すんだよ?いつも私がしてあげてるみたいに、お尻の穴に指を突き立てて、ね?」

「そんな・・・・そんな、こと・・・・」

「イヤなの?それなら可哀そうだけど、がまんしなきゃだめだね。」

ひどい・・・・
がまんなんか、できるわけないのに・・・・・!

冷然と言い放たれた言葉に、俺は涙を零しながら唇を噛みしめた。
まるでラベンダーに弄ばれているかのようで、悲しくなってしまう


__だけど





躰の奥が疼いて疼いてしかたがない

そんな屈辱的なことには従うまいと思うのに・・・・強制されることに悦びを感じている自分がいる
あの甘美な声に命令されると従わずにはいられない自分がいる


だから、

だから_____


俺はそっとラベンダーの胸を押し、戒めを解いてもらうと
絨毯の上に四つん這いになり、自身の窄まりへと指を突き立てた。




「ひっ・・・・あぁっ・・・・・・!」

襞を割って差し込まれた刺激にびくびくと背骨がしなる
先走りの汁が滴っていたせいでそこはひどくぬめついていて、熱かった。

「くッ・・・・・・んんっ・・・・・・・」

指を差し入れ、何度も抜き差しする
指なんか、いらない。早く・・・ほしい・・・・・ラベンダーが・・・・ラベンダーの、ペニスが・・・・

ほしくてほしくて涙を流しながら、俺はラベンダーに何度も何度も哀願した。




「ラベ、ンダーぁ・・・・・」

「もう、いい・・・? ほしい・・・・ほしいよ・・・・」


がくがくと震える躰で懸命に秘蕾を解し、滲んだ視界にラベンダーを捉える

くちゅくちゅと卑猥な音を立てながら、ラベンダーに見られながら自分で解すなんて、
本当は屈辱的なはずなのに___

彼に見つめられていると思うとたまらなく興奮してしまう。
下肢をぐちゃぐちゃに濡らして、もっともっとナカに指を突き立ててしまう。無様に感じてしまう。




「そんなに指を突き立てて、一人で感じて。カモミールってば自分ひとりでするのが好きなんだね?」

「ちが・・・・!ほし、い・・・・から・・・・・ほしい・・・・・よ、ラベ、ンダーぁ・・・・!」

「まだだめ。もっと解して?じゃないと怪我しちゃうよ?」

「やだっ・・・・もう、ほしい・・・っ」

「我儘だなぁ。」




ラベンダーは低く笑うと、俺の尻を掴み、窄まりにそっと舌を這わせた。
突然の刺激に驚き、甘く鋭い喘ぎ声をあげながら腰をくねらせしまう

「ひッ、うぅ・・・・っ」

ラベンダーは俺の反応を楽しむように舌で蕾をこじ開け、吸い付く。
じわじわと押し上げられる快感にたまらず、後ろを振り返ると
俺の双丘に顔をうずめるラベンダーの姿が目に入り、そのあまりに刺激的な光景に驚く。

ラベンダーが・・・俺の・・・・

愛しい彼がそんなところに口づけているのだと思うと、ぞくぞくと悦びが溢れ出し、俺は更に感じてしまった。




「うん。もういいかな?たっぷりかわいがってあげる。」

ひとしきり窄まりを解した後、彼は微笑ながらそう言った。
やっと赦しをもらえ、俺はほうっと吐息を吐く

「うれ・・・しい
「ラベンダーも服・・・脱いで・・・?」

「脱がないよ」

「___えっ・・・・?」




「今日はおしおきだからね。このまま犯してあげる」





シルクの生地で覆われた指で腰を掴まれ、強引に引き寄せられる
固いペニスの感触が双丘に当たり、俺ははっとした。

「このまま・・・するの?」

「そうだよ」

「この体勢、やだっ・・・・」

バックはあまり好きな体勢ではなかった
後ろから躰にのしかかられ、わけもわからないまま突かれるなんて・・・そんなの嫌だ。
俺はラベンダーの顔を見ながら、口づけを交わしながら、彼に抱かれたいのに・・・・


「だめだよ。おしおきだって言ったでしょ?」

しかし、彼は残酷に囁いて___俺の蕾を開き、自身をぐぷりと宛がった




「あ、あっ・・・・うっ・・・!」

熱い楔がごりごりと侵入してくる

みっちりとしたものがナカを満たす感覚に陶酔する
待ち望んでいた充溢に躰じゅうが痺れ___俺はそれだけで達してしまった

「ん、んーーーーッ・・・・・!」




「あっ・・・・はぁっ・・・あぁっ・・・・・」

「あれ?もうイッちゃったの?挿れただけて射精しちゃうなんて、よっぽど私が欲しかったんだね。」

「うん・・・ほしかった、の・・・・」

欲しくて、欲しくて、たまらなかった
でも、まだ足りない
もっと擦ってほしい。激しく突き立てて、乱暴にいじめてほしい

なのに、彼はぴたりと動きをとめて、もどかしさに懊悩する俺の顔をしげしげと眺めているだけだ

「な、んで・・・・ラベンダー・・・・もっと・・・・」

「もっと、なに?動いてほしい?」

「っ・・・・・」




「これはおしおきだって言ったでしょう?だから、ちゃんとおねだりしないとだめだよ?」

「そ、んな・・・・・・」

ラベンダーはとことん俺を辱めるつもりなのだ。

ひどい。なんて、意地が悪いんだろう。こんなどうしようもないところまで追い込んでおいて
最後の最後まで俺に求めさせようとするなんて

「その可愛いお口で言ってごらん?どうしてほしいのか。」

「やっ・・・・・言え、な・・・・・」




あまりの苦しさに涙を流しながら抗うと、突然、秘肉を擦りあげられるように刺激され
俺は躰をわななかせながら嬌声をあげた。

「ああっ・・・・・!」

鋭い悦楽の波に啜り泣いてしまう。
急にするなんて、ずるい。こんなの、ひどい・・・・


でも、きもち、よかった・・・・


俺は気がつくと腰を蠢かして、ラベンダーの男根を奥へ奥へと誘っていた
ふしだらな秘蕾は彼にもっともっと犯されたがってひくついている。
こんなの、逆らえるわけ、ない。このままでなんていられるわけないのに、ラベンダーは狡猾に俺を責めたてる




「ねぇ、カモミール。なんて言えばいいんだっけ?」

「はあっ・・・ん・・・・・ッ!」

ナカをぐるりと円を描くように回され、もどかしくて、頭がおかしくなりそうになる


「ん、うっ・・・・・・・もう、ゆるして・・・・・」

「だめだよ。ほら、言って?言わないといつまでもこのままだよ。」

「やぁ・・・・や、だぁ・・・・・」

「もっとしてほしいでしょう?苦しいでしょう?」

「う、・・・ん・・・・ほ、しい・・・・」

「おねだりしないと、してあげられないよ?カモミール、さぁ、言ってごらん。」




まるであやすかのように優しく背中を撫でられ、心が瓦解してしまう。
俺はラベンダーには、敵わない。
この人の指先が触れるだけで心がゆるみ、俺の身体は否応なしに屈服させられてしまう

この人に、そう作り変えられてしまったのだ・・・・・

俺は吐息を震わせながら、唇を開いた


「お、奥・・・・もっと、
「・・・・突いて・・・めちゃくちゃに、して・・・・」

「俺を、・・・・犯して・・・・・」





「ふふっ、カモミールったら・・・

「しょうがない子だなぁ」





刹那、ずるりと引き抜かれ、叩き込まれるかのように激しく突き上げられる。

「あっ、あぁっ、・・・ん・・・・あぁ・・・・・!」

躰が裏返ってしまうかのような、甘美な愉悦に俺は歓喜の声をあげた。

すると今度は腕を引っ張られ、驚くほど乱暴に犯される
猛った男根が熟れた肉襞を擦り、結合部分がぐちゅぐちゅと卑猥な音を立る

引っ張られる腕が痛くて、苦しくて、もっともっと感じてしまう




「ああっ・・・・ラベンダーぁ・・・!ラベンダー・・・・!」

獣のように舌をだらしなく出して、俺はただただ快楽に身を任せ、夢中になって喘いだ。



無理やり咥えこまされ、後ろから滅茶苦茶に突かれるなんて、

___まるで凌辱されているかのようだ





そうだ

俺はいま、ラベンダーに、支配されている・・・
支配されているんだ・・・・


「あっ、あっ、ああーーーーッ・・・・・!」


ひときわ激しく突きあげれ、快楽の白い波が押し寄せる。
目蓋の奥に火花が散る。
被虐的な悦楽に爪の先まで満たされ、俺は涎を垂らしながら達していた。


その瞬間、熱いものがびゅくびゅくと体内に注ぎ込まれ、ラベンダーが精を放ったことを知った。

「んっ・・・・う・・・・・」

その感触に恍惚として甘い吐息を漏らすと
床に躰を押し付けられ、口づけをされる。




強引に割って入ってきた舌を一心不乱に抱き寄せ、甘い蜜に酔う。
上も下もお互いの粘膜で繋がっている。ひとつに溶け合っている
食べられ、貪られ、搾り取られている

その事実がたまらなく嬉しくて、俺は何度も何度も舌を絡ませ、唇を合わせた。




「ん・・・・ラベ、ンダー・・・・す、き・・・・・」
















シャワーで体液を洗い流し、バスルームを出た途端
ベッドルームへ強引に連れて行かれ、腕の中に捕えられてしまう

どうしたのかと問いかけてもぎゅうっと戒めを強められるだけで、ラベンダーは押し黙ったままだった。




「なにか、あったの・・・?」

今までも何度かこのように激しく責め立てられたことがあったが
今日ほど、彼を意地悪だと思ったことはない。それほどまでに狡猾で、底意地の悪い責められ方だった

だから、なにか、あったのではないか
その心はいま、何を想っているのだろうか


「もしかして、猫に嫉妬してる・・・・?
「あの、俺は本当に猫のことしか・・・考えてなかったよ・・・・?」

「うん。わかってるよ。カモミールは嘘をつかないって信じてるから」

「じゃぁ、どうして・・・・」

「何でもないよ、ただ・・・・」




「カモミールは私のものだってこと、思い出してもらおうと思って。」

「ふふ、ちょっとやりすぎちゃったかな?ごめんね・・・・・」




「ラベンダー・・・・」

彼は、瞳を虚ろに彷徨わせ、消え入りそうなほど幽かな声で囁いた
その切なげな表情に目が釘づけられる。

ミステリアスな彼の独占欲に触れ、愛しさで心臓がきゅっとしてしまう。


「・・・やっぱ、ずるいよ」

「え・・・・?」

「ラベンダーは、ずるい・・・・
「そんな顔をされたら、赦すしかないじゃん・・・・」

「ごめんね?」

「だめ。ゆるさない」




「でも___もう一回、してくれたら・・・許してあげてもいいよ」

「え・・・?」

「その代わり、今度はラベンダーも服を脱いで?俺も、ラベンダーの肌を味わいたい・・・・」

「・・・・またシャワーを浴びなおさなくちゃいけなくなっちゃうよ?」

「そうしたら__一緒に入ればいいじゃん。ね?それがいいよ・・・・」




「うん・・・・そうだね・・・・ありがとう。」

髪にそっとやさしいキスが落とされ、うれしさが溢れ出す。

自分はとことんラベンダーに甘いなぁと思ってしまうが
甘やかしたいのだからしかたがない。

甘えてほしいのだ。

寂しがり屋で、嫉妬深くて、意地悪で、
どうしようもなほど困ったこのひとを・・・・好きになってしまったのだから





好きだよ、ラベンダー・・・・



俺は、意地悪な君が好き





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