田中「これでHRを終了する。応援団は今日の放課後、練習があるから残るように」
「・・・はい」
体育祭で、応援団をやることになってしまった
僕は転校生だから、この学校の体育祭に参加するのは初めてだ
だから、なにもわからない
(教えてもらえるとはいえ わからないままじゃ・・・だめだよなぁ・・・)
(先生に聞けば、詳しく教えてもらえるかな?)
映像や写真があれば、もっといい。歴代の応援団がどんなものだったか放課後までに学んでおくことができるし
なにより知りたかった。
ウサギくんのおかげで・・・
なんとなくだけど、体育祭に参加することに意欲がわいてきていた
(先生、職員室にいるかな・・・・)
「__だわ~ん♥」
「___」
「ん・・・・?先生の声・・・・?」
(踊り場の方からだ・・・・何だろう 誰かと話しているみたい・・・・・
(何を話しているんだ・・・・・?)
先生、と・・・・安藤君・・・・・・・・!?
(な・・・・・なんで・・・・こんなところに・・・・?)
「__さぁ、___教えろよ」
「ふふっ__」
(・・・・・っ)
彼らはまるで隠れるかのように踊り場の隅にいたため、こちらからじゃあ何を言っているのかさっぱりわからなかったけれど・・・・
途切れ途切れに聞きとることができた会話はとても楽しそうなもので
二人が親しい間柄だということは手に取るようにわかった
安藤君の肩に手を置いて、媚びるように、甘えるように体を摺り寄せている先生。
それを満足げに眺める彼、視線を絡みあわせるふたり_____
(二人って・・・・そういう関係なの・・・・?)
それはなんだか、見てはいけないもののような気がして・・・・
僕は足早にその場を立ち去ってしまった
「___お前さぁ、どうやって俺をリレー選手にするわけwwww」
「あのセンコー、結構実力あんだろ?www無理くねwwww」
「あらあら~~ん?そんなの、アナタたち生徒は考えなくていいのよ~~ん?」
「何があらあらーだよwww教えろよwww」
「うふっ♥ 安藤クンったら、私のことが気になるの~~?でも、残念。全然フツーよ~~ん?
「一生懸命お願いするの♥ 私がアナタたちのためにできることはそれだけだわ~~ん♥」
「お願い?wwwwwえwwおまwwwwお願いすんのぉ?wwwwwwww」
「はっ、そりゃ___どんなお願いだかわかったもんじゃねぇな
「お前が一番信用ならねぇんだよ。人畜無害そうなツラしやがって・・・・今は一体何人ペットにしてんだか」
「あら?何の話かしら~~ん」
「学校裏サイトじゃ有名だぜ?お前の性癖はよぉ・・・・・」
「安藤クンったら、そんなの信じてるの~?」
「生徒のためとかいって生徒喰いものしてるやつが担任なんだぜ?警戒もするだろ」
「うふっ♥ そういうことね。でも、ノンノン!違うちがぁう
「私は生徒たちを『くいもん』なんかにしてなぁいわ~~~ん」
「ただ、味見してるだけよ? こうやって・・・パクってね♥」
「・・・っ!」
「うふっ 安藤クンのほっぺ、おいし♥」
「・・・・はっ、__やっぱ、喰えねぇやつだな。お前___」
「そんなに簡単に食べられちゃったら困っちゃうもの♥」
「そりゃそうだなwwwwwww」
・
・
・
キーンコーンカーンコン
「はい、それじゃぁSHRを終わります。みんな、気を付けて帰るんだよ?
「あ、そうそう。掃除当番はきちんと教室を清掃してから帰ること。ピンクちゃん先生がいないからってサボっちゃダメだよ?
「サボった子はおしおきだからね。」
「はーい」
ザワザワ・・・・
(結局、何も聞けずに放課後になっちゃった・・・・・)
あの後、先生を見かけるたびに『声を掛けなくちゃいけない』と思ったんだけど
何故か・・・・声をかけることが億劫で、そのままずるずると時間を無駄にしてしまった。
(そうこうしているうちに先生は出張でどこかへ行っちゃうし・・・
(なんだか、いやになっちゃうな・・・・
(・・・・まぁ いいや・・・・田中さんに全部教えてもらおう 映像を見たってどうせ変わんないよ)
あんなにやる気が湧いていたのに、今ではすっかり、やる気が萎え、面倒だとすら感じている自分がいて不思議に思う
人の気持ちはこんなにも変わってしまうものなのか
・・・・・自分がそうなのだ。きっと、彼もそうなのだろう。
だから、先生を口説いていたのだ。あんなに僕のことを追いかけまわしていたのに・・・・
「___よかったなァ。衣装係、決まって」
(・・・・!この、声は・・・・)
「・・・・何?僕に何の用?」
「いやwよかったなぁと思ってさぁーー」
「・・・・それって皮肉?」
「えー?www俺はただ転校生のことを祝福してやってるだけなんだけどーーwwwww」
「・・・・君が言うと そういう風には聞こえないんだけど」
「はっwwwそれはお前がひねくれてるからだろwwwwww」
「安藤君には言われなくないよね」
「おま・・・・wかわいくねーなwwww」
「・・・・別にかわいくなくていいんだけど」
「うっはーwwwwやばっwwwwwイイねーwwwお前の態度wwwwやっぱクるわぁーーーーwwww」
「なにそれ」
「・・・・別にかわいくなくていいんだけど」
「うっはーwwwwやばっwwwwwイイねーwwwお前の態度wwwwやっぱクるわぁーーーーwwww」
「なにそれ」
いったい、僕に何の用なんだ
先ほどあんな光景を見てしまったからだろうか、何故か安藤君の目をみることができない
そんな僕とは違って安藤君は・・・・あまりにもいつも通りで___
「褒めてんだよwwwww
「ま、そんなことより・・・・・お前さぁ、なんで俺を推薦したわけ」
「!」
「もしかして、同情でもしちゃった?wwwあ、この人カワイソーってwww憐れんじゃった系?wwww」
「・・・・そんなんじゃないよ ただ安藤君ってすっごく脚が速いから・・・だから 推薦しただけだよ」
「お前だって速いだろ」
「僕なんて全然速くないじゃない ほんとはいつだって追いつけるくせに
「そうやって いつも僕のことばかにしてんだろ 本気出さないでさぁ・・・・さすがだよね」
「・・・は?」
「・・・・・・・えっ、お前・・・・・なんで怒ってんの?」
「は?別に怒ってないよ」
「怒ってるじゃん」
「怒ってないってば・・・・!」
「・・・安藤君こそ さっきから何?何でそんなこと気にすんの
「別に君が思ってるようなことは考えてないから安心してよ 僕はべつに___」
君のことなんて何とも思ってないから
「んんっ・・・・・・・」
「っ・・・・やだっ、・・・・・・やっ・・・・・」
言葉をキスで塞がれて、眩暈がするほど吸い上げられる
必死で逃げようとするけど、躰じゅうが痺れて動けない
「んっ・・・、ふっ・・・ぅう・・・・・・」
ああ、まただ・・・・・
あまい、あまいキス
僕の躰全部、溶けちゃいそうなほど・・・・・・
あまい、あまい、あまい・・・・・
「・・・・・なっ、なんでっ・・・・・・」
「ん?」
「なんなの・・・!?君は・・・・!なんで、こんなキスばかりしてくるの・・・!?」
口づけから解放された僕は、甘い痺れを堪えながらたまらず問いかける。
理由が、知りたかった。どうしてこんなことばかりしてくるのか
・・・・安藤君が何を考えているのか
「んーーーーー?wwww」
「え?いやwwww別にー?なんとなく?wwwww」
「俺はさぁ、俺のしたいときに、俺のしたいようなことをしたいわけよwwwwww我慢とか、マジむりだからねーwwwwうぇwっうぇwwwwwww
「ってことでーーwwもーーー一回ヤらせてくんね?wwww」
(そんな・・・・
(そんな理由で、君は僕にあんなことをするの・・・・?)
なんだよ・・・それっ・・・・・・
安藤君のふざけた言葉に激しい怒りが湧く
結局、この人はこういう人間なのだ。他人のことなんて、どうでもいい。いじめっこ。
だから僕にこんなことをする。反応を見て楽しんでいる。
彼のことを一瞬でも「いいひと」だと思おうとした自分が馬鹿みたいに思えてきて、僕は詰るように吐き捨てた。
「・・・・・・っ やっぱ君って最低だね・・・・!」
「おほーww最低とかwwwwサイッコウの褒め言葉だねwwwwあーwwてか、やばっwwwお前の罵倒、マジいいわぁーーwww」
「何が最高だよ・・・・最悪! 吐き気がするよ
「僕は・・・まだいいかもしれないけど 先生にまで手をだして・・・・!ほんと 腐ってるよね 君は」
「・・・・・・・・は?先生・・・?___おまえ、何言ってんの?」
「何って・・・!ピンク先生だよ!彼にもなんとなくでそういうことしてるんでしょ!僕、知ってるんだからね」
「はぁ・・・・・・・・?」
「・・・・お前、アレかwww俺とあいつが踊り場でいちゃついてんの見たっつーそういう?www」
「見たけど それが何か?見られたくないならラブホいけばいいのにさ 浅はかすぎて反吐が出るね」
「はっwwwいやーwwwマジかよーwww」
「・・・・・・・お前・・・俺のこと好きなんだろ」
「はぁ!?何バカなこと言ってんの!?」
「だって、そういうことだろ?wwwヤキモチじゃんwwwそれwwwww」
僕が・・・・君を好きで・・・・・
焼きもちをやいている・・・・・・・・・、だって・・・!?
人として最低な行為を行っていた安藤君のことを人として失望していただけなのに
何故嫉妬したなどと思うことができるのだろう!
複雑で突飛な思考回路に呆れてしまい、思わず彼の目を見つめると・・・・
「・・・・・っ!」
熱を帯びた真剣なまなざしが食い入るようにこちらに向けられていて・・・・
ひどく、狼狽する。
(な・・・・なんで、そんな顔をするんだよ・・・・)
キスの後だからだろうか、彼の瞳は潤み、表情全体が蕩けたように甘くなっている
その優しく、艶を帯びた表情に心臓が騒ぎ____その事実が更に自分を動揺させる。
安藤「・・・・俺が、好きなんだろ?」
「・・・・っ! ち、ちがうってば・・・・」
「いーやwwwそうだねwww目をみりゃわかるよwwww」
「適当なこと言うなよっ・・・・・・!」
「だって、めっちゃ見てんじゃんwww___そんな目で俺のこと見つめんじゃねぇよ」
「・・・っ!み 見つめてなんかいないだろっ・・・・・」
「いーやww見つめてるねーwwあーあwもーーーーーwwやめてくれよマジーーwwww」
「止まらなくなるだろ・・・」
「えっ・・・・・」
ちょっ・・・・ちょっと・・・・・・!
熱い吐息が近づいてきて、焦燥感がつのる
逃げなくてはいけない、と思うのに・・・・目を閉じることもできなくて・・・・
切なげな色が灯る彼の瞳を、僕は___ただただ見つめていた・・・・・・
「トイレでラブシーンとは・・・・全く。好き者ここに極まれり、だな。」
「・・・!た 田中さん・・・・!」
「うわーーーwww出たよwwwwいつもいいところで邪魔奴~~~wwwwwwお前ホントタイミング神だなwwwww」
田中「お褒めにあずかり光栄だ」
「褒めてねぇよ?wwwwwwwwwwwww」
「ああ・・・田中さん・・・・!来てくれて・・・よかったです・・・!あの、僕・・・・!」
田中「はぁ・・・・全く」
「世話がやける」
「あっ・・・・田中 さん・・・・?」
「応援団の練習をしに行くぞ。お前は初めてだからな。教えることが山ほどあるんだ
「・・・・こんなところで安藤のやつに捕まっている暇などないぞ」
「は、はい・・・!」
まるで金縛りから解けたように自由になった身体でそっと吐息を漏らすと、田中さんに腕を取られ歩き出す
汗がじっとりと頬を濡らし、心臓が騒がしく脈を打ち続けていて・・・・苦しいほどだった
とにかくこの場から立ち去りたい
僕は__自分のことでいっぱいいっぱいで・・・・
二人がその時、どんな表情をしていたかなんて・・・・
全く気がつかなかった
ツヅク(^~^)
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