2013年6月10日月曜日

【Spin off= M@o】 V・I・P ROOM 【前編:R-18】











あらすじ(反転) ◆前回◆

玩具を手に入れた____

マオはアイリスとゲームをしていた。
「奴隷ごっこ」
三か月間マオの言うことをなんでも聞けたらアイリスの思いを聞き届けてやる
そんなことを嘯いてマオは彼を下僕にした。

最初はただただ苛つくあの男をなんとかして傷つけてやりたかった

それが今ではもう____

あの男をいたぶり、弄び、搾取することが愉しくてしかたがない
あの男が命令に従う様を見たくてたまらない
あの男の内側が見たくて見たくてたまらない

次第にアイリスに嵌っていくマオ___


はたして・・・・歪んだ関係に終着点はあるのだろうか・・・・・?



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家は裕福だった。
何もかも手に入れられると思っていた






爽やかな容姿と軽快な弁論から、若手政治家の中でも一目置かれるほどの存在である
立派な父親




モデルとして活躍していたが、類まれなる才能を発揮して、会社を興し、自ら社長となった
美しさと賢さを兼ねそろえた母親




俺はそんな両親から生まれた

家は裕福だった。
何もかも手に入れられると思っていた

実際俺が望めばどんなものでも手に入った

最新式のコンピューターゲーム
プレミア付きの映画チケット
有名シェフが作る、馬鹿みたいに贅を凝らした食事

周りの者からは
「お前は世界一幸福だ」といわれていたし

自分自身も「世界一幸福」だと信じて疑わなかった
疑いたくなかった


自分は「世界一幸福」だ








どんなにさみしくても
どんなにひとりぼっちでも
どんなに「自分が愛されている」と感じられなくても

自分は「世界一幸福」


まるでペットかなにかのように。メイドに任せきりにして気まぐれにしか俺の世話を焼かない母親。自己顕示欲と、名誉欲と、支配欲と、自分のことにしか興味関心がない父親。抱きしめられた記憶なんてほとんどなかった。ただただ愛してくれるだけでよかったのに。そばにいて抱きしめてくれるだけで満たされたのに。抱きしめてたった一言「愛している」と言ってくれればそれでよかったのに。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして





ぱぱとままは どうして ぼくのそばにいてくれないんだろう


つごうのいいときばっかり

もので ごまかして

いちばんほしいものは くれない



おれがほんとうに のぞんでいるものに 気づきもしない






どうして?






豪奢な屋敷の中で____俺はいつも孤独だった


まるで死んでいるかのような毎日

誰かに見てほしくて

気づいてほしくて





さみしくて____



愛欲と寂寥と激情と希求とで抑圧された自己は
むくむくと膨れ上がっていって___俺の中で暴れだした








____初めて誰かに暴力をふるったのは俺が15になったばかりの頃


今まで押さえつけていたものを吐き出すかのように
メイドのひとりを犯した。





泣き叫ぶ女、鳩尾を殴って黙らせ裸に剥く
恥毛に隠されたそこを雄の性器で無理やりこじ開ければ_____




驚くほど__気持ちがよくて・・・・・





俺は肌のぬくもりを求めて夜の街を彷徨うようになった


寝る相手には困らなかった
両親の存在をちらつかせてやれば男も女も蛆のように湧く。

男でも女でも誰でもよかった。
ただ、そばにいて肌を重ねられれば

女のように綺麗な顔立ちをしていて、なおかつ金を持っていた俺は
馬鹿な女どもを籠絡させることなんてわけなかったが___男を落とすことはもっと簡単だった

だから、だんだん男と寝るようになった。



女とのセックスとは明らかに違う、あの刺激的な感覚に嵌ってもいた。

あの痺れるような快感。
一度知ってしまうともうやめられなかった




やわらかな粘膜を太い男根でごりごりと削られるあの陶酔。恍惚。悦楽。
性急に追い立てられ、どろりとした体液で汚される。
瞼の奥に火花が散るほどの快楽で俺はなにもかも忘れることができる。

男の逞しいものを咥え、ナカをいっぱいにすると

からっぽな俺でも_____


満たされるように感じた




男と寝るようになってから初めて父親から皮肉を言われた
母親は躍起になって俺の情報を隠匿した





ばかみたいだ、と思った

何故俺がこうなったのかを知ろうともしない
俺がどうしてこんなことをしているのか知りもしない


なにもわかろうとしない



・・・・わかるわけがないのだ

ただエサを与えられ肥え太らされていた俺は____




ただただ両親にとって都合のいい道具であり、玩具であり___


家畜だったのだから





俺の存在はあいつらにとってその程度のモノでしかない。
誰にとっても俺は「大切な存在」じゃない

そう思うと、頭がおかしくなってしまいそうになって・・・・・
俺は、俺は______











荒んでいた頃に出逢ったのがカモミールだった




彼だけだ
見返りを求めず自分のそばにいてくれたのは

彼だけだ
俺のことを見つけてくれたのは

彼の存在にどれほど救われたか
彼の存在にどれほど希望を見たか


俺には彼だけ、だったのに____















ppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppp








「・・・・もしもし?」

『おーーーう!マオ~~俺俺!デレクだけどさぁ~元気してるぅ~~?』

「・・・ああ、元気だけど?何」

『ちょーーwなんか冷たくねーー?まあ、いいや。お前さぁ~今夜空いてるーー?』

「今夜?」




「今夜もパーッとやるからさぁ~。来いよ。みんな待ってるぜ」

『・・・・』

「てかーー、最近付き合いわるくねーー?昨日もさぁ、来なかったじゃーーん?」
「なんかハマってんの?え?なんか楽しいことーー?」

『・・・ああ、まあな』

「えー?なになにー?」

『秘密だ』

「えーーーー!なんだよそれぇ~~!俺らにも教えてくれよ~~トモダチだろー?w」




「・・・まあそのうち教える
____今夜か。場所はいつもの場所でいいのか?」

『ああ、そうだぜ』

「わかった。それじゃ、また」

『OK!じゃ、待ってるぜーーーー』









トモダチ。

よくもまあ、いけしゃあしゃあと言えたものだ

俺の金とコネだけが目当てのハイエナが
都合のいい時だけしっぽふってりゃいいんだから、あんたは楽だよな

まあ、そんなあんたらを見下して馬鹿にして、都合のいい時だけ利用してる俺も俺だけど。




___今更友達がほしいだなんて思わない


お互いを尊重しあい、大事に思える関係なんて
俺のような人間に築けるはずがない

相手のことを思いあい、わかりあえる関係なんて
恐怖でしかない

どうせすぐ壊れてしまうのだ



それなら最初から ないほうがいい











それに俺にはもっと愉しい玩具があるのだ

あれ以外はいらない
あれ以上は求めない


さて、今日はなにをして遊ぼうかな______

































「・・・・・くっふ・・・・・・・」




「んっ、・・・・・・・・」




「・・・・」

ぴちゃぴちゃ、と奴隷が舌を動かす音が響く。
奉仕するように言いつけて数分経つが、口淫などしたことがないだろうアイリスの動きは
やはり稚拙で快楽とは程遠いものだった


「・・・・もういい。」

中途半端にしゃぶられるだなんて、まるで馬鹿にされているかのようだ
俺はうんざりとして行為を中断するように命じたが
奴隷は更に口の奥に俺のモノを咥え、舐めしゃぶる


「いいっつってんだろ!」

強情な態度に腹が立ち、髪を強く掴んで引き離すと、奴隷は驚いたように目を見開いた




「お気に召しませんでしたでしょうか」

「お気に召してたらとっくにイッてるっつーの!全然気持ちよくねぇんだよ
「ったく、これだから処女は嫌なんだよ・・・・・なんか醒めちまったわ

「てかーー。フェラも満足にできねぇ奴隷とか___まったくの無価値なんですけど~~~」


「・・・・」




「・・・・それでは

「もう一度チャンスをください。
「次こそは陛下のことを満足させてご覧にいれます」


「・・・・はぁ?」






「・・・てかさぁ。



「そんなことより____ごめんなさいだろ?」




「てめぇは一体何様のつもりなんだよ!!滓が!!」

役立たずな奴隷を叱りつけ、殴りつける
こいつは奴隷のくせに自分の身分をわきまえていない行動をとることが多々あった。

まるで俺と対等であるかのような態度をとる
そんなことをすれば、仕置きをされることくらいわかりそうなものなのに___


「あんたってほんと頭わりぃよなァ。想像力のカケラもないのかよ

「それとも・・・・俺からのオシオキを期待してんのか?」









「___おい、そこの便器に座って腕を出せ」


冷たい声で命じてやると奴隷はややよろつきながらも、素直に腕をさし出す

俺は鞄から手錠を取り出し、奴隷の手首に嵌めると、それを水道管に繋いで拘束した。
そしてより羞恥心を煽るために____やつのベルトに手をかけ
スラックスをずりおろす

「陛下・・・?」

下着もすべてずりおろしてやると奴隷はやや困惑したように俺の瞳を見つめた




「陛下・・・これは・・・」

「はぁ?わっかんねぇのかよ。どこまで馬鹿なんだか___」




「オシオキにきまってんだろ

「__あんたさァ、奴隷のくせに生意気なんだよ。いちいちいちいち口答えしやがって!
「あんたに人権なんてねぇ。拒否権も選択権も反論する自由もなんにもねぇんだよ。このドブ鼠が。

「だから、そこでしばらく反省してろ」


「そんな・・・・!こんなところで放置されたら、警察が来てしまいます」

「んなこと知るかよ」


警察は来ないだろう。
もしかしたら誰も来ないかもしれない
邪魔が入らないようにわざわざ誰も使用しないような、汚らしい公衆トイレを選んだのだ。

こんなところを利用するだなんてそれこそホームレスか
___逢引き目的の輩だろう。なんせここは”そっち”の趣味の方たちにとっては有名な場所だからな




「じゃあな」

俺は情けない恰好をした奴隷をチラリと一瞥すると、扉の方へ向かってゆっくりと歩を進めた


「陛下・・・・本当に行ってしまうんですか・・・?
「お待ちください」

その背中を奴隷の声が追いかける


「申し訳ありませんでした。・・・陛下・・・・・」


「陛下・・・・!」





「待って、いかないで・・・ください・・・!」








「・・・・申し訳、ありませんでした・・・・赦してください」

「___は?なんで俺があんたの言うことを聞かなきゃなんないわけ
「なんであんたみたいな役立たずを赦してやんなきゃいけないわけ?」


「すみませんでした。ですから・・・どうか・・・お赦しを」

「あぁ?」




「なんだよあんた、俺に見捨てられんのがそんなに怖いのか?
「そんなに俺に置いてかれるのが嫌か?

「そんなに俺がいねぇとダメか?さみしいか?とんだ甘ちゃんだなァ」


「はい・・・」




「・・・はい。さみしいです」









「さみしい」


その言葉にドクンと躰の芯が脈打つ

そこまでして俺に追い縋って、無様に救いを求めて
まるで俺がいないと生きていけないかのように切なげな顔をして。
さみしいのか?そんなに俺がいないとさみしいか?

あんたって、ほんとに俺がいないとダメなんだな
あんたって、ほんとに俺がいないとダメなんだな
あんたって、ほんとに俺がいないとダメなんだな



脳髄が甘く痺れる

悦びに手足が震え、ぐらぐらと地面がうねる


それを振り払うかのように、浸るかのように俺は____アイリスの股間を靴で思い切り踏みつけた




「あっ・・・・う、ぐ・・・・・っ!」

まだ反応していない肉塊を緩急をつけ、しごくように踏みつける
するとすぐに奴隷の息が荒くなり、夢見るような瞳になる。

「あんたは本当に踏まれるのが好きだな。この、気持ちわりぃド変態が」

「ん、・・・・・や、め・・・・・・」

「は?なんだよ」




「赦してほしいんじゃねぇのか?
「いいのかよ?あんたを置き去りにして。」

「そ・・・れは」

「だったら黙ってされるがままになってろよ
「また気持ちよくしてやるぜェ?気持ちよくなりたいだろう?」

「うっ、うう・・・・・」




固く目を閉じて吐息を滲ませ、快感に悶えるアイリスからは
まるで情夫のような色香が滲み出ていて・・・舌なめずりをしたくなるほどだった

普段は人を食ったような態度をしているくせに
ちょっと嬲ってやると、面白いくらいに反応し、びくびくと躰を震わせてくれる

いつも素直に反応すればいいのに

気に食わない。

まるで二重人格みたいなこいつが、気にくわない





俺に身を委ねて、快楽に浸ってしまえばいい
すべてを曝け出して、あんたを見せてみろ

見たい 欲しい こいつのすべてが喉から手が出るほど欲しい
すべてを奪いつくして 壊しつくしてしまいたい

見せてくれ あんたの全部

欲しい

欲しい




躰が震え、吐息が弾む

最初はただただ踏みしだいていただけだったのに
気が付いたら俺はやつのペニスを自らの手で揉み扱いていた




「あっ・・・・・・・・・うっ・・・・・!」

溢れ始めた先走りの蜜を塗り広げ、
付け根から先端にかけてを何度も何度も弄ぶ

そのたびに快楽に打ち震え、可愛く啼く奴隷
びくびくと汁をしとどに垂らし、熱く、固く、俺を求める___

「うっ・・・・、ん・・・・・、ふ・・・・・・」




「ああ・・・・っ、気持ち、いい・・・で、そう・・・です」

「我慢しろ」

「そん、な・・・」

「・・・イキたいか?」

「・・・・・・う・・・・んっ・・・・・・」




「ああ?なんだその答えは?そんなんじゃイかせてやれねぇな___

「言えよ。イかせてくださいって
「はしたなく俺に懇願してみせろ」

「うっ・・・・・・ああっ・・・はぁっ・・・ぁっ・・・」

「ほらほら。ちゃんと俺の命令に従わねぇといけないんじゃないの?
「いいのかよ。ここで終わりにしてもよぉ」

「っ・・・・、ん・・・・・せんぱ・・・・・い・・・・せんぱいっ・・・・・・・」




「あっ・・・・・、・・・・うっ・・・んんっ・・・・!」






「出すな」と命令をしたのに・・・

奴隷は俺の手の中であっけなく精を吐き出した


「あーーあ、あんたが勝手に出すから手が汚れちまった
「どうしてくれんだよこれ」

「す、みませ・・・・」


「舐めろ」


「え・・・?」

「あんたのせいで汚れたんだ。あんたが処理をするんだ」

「・・・・」


指を目の前につきだし、静かに命令してやると
奴隷は従順にうなずき、おずおずと舌をのばした




「ん・・・・・」


あたたかく湿った塊が俺の指を這う
チロリと皮膚を撫ぜ、体液を掬い取り、ねぶる

「んんっ・・・・・ふ・・・・」


精液を舐めるのはやはり抵抗感があるのだろう。少しえづきながらも奴隷は懸命に俺の指を舐め___
次第にむしゃぶり始める

べろべろと舐め回し、吸い付き、唇で扱く。
まるでフェラチオのようなソレに愉悦を感じた俺は口の端を歪め___咥内を指で引っ掻いてやる

すると奴隷はびくりと躰をくねらせ、切なげに眉を寄せる・・・・




「・・・・ん、・・・・う・・・・・・・」


___なんて、無様で可愛いのだろう

俺が命令すればなんでもいうことをきく
可愛い可愛い俺の奴隷

俺を、俺だけを受け入れる
俺だけの玩具

俺のためだけに存在する
俺だけの・・・






pppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppp




びりびりと痺れる思考を振り払ったのは
無粋なコール音だった

しかも、その音の発信源はどうやらアイリスのようで____


「____あ?」





「勝手に着信させてんじゃねーよ!糞が!!」


「うっ・・・!」

「俺と一緒の時は電源切っておくのが常識だろ!?
「んなこともわかんねぇのかよ!」

「すみま・・・せ・・・」




奴隷を殴りつけ、携帯を取り上げる

俺に断りもなく携帯を鳴らすだなんて生意気なことを・・・!
せっかく愉しんでいたのに興がそがれちまったじゃねぇか


俺はいまだ手の中で煩く鳴り響くソレを睨みつけ_____着信画面を見て目を見開いた


アイリスの電話の相手は





なんと、セージからだったのだ


「『セージ』・・・・」













「・・・・・」

咄嗟に思い出されたのは先日、カフェでの出来事だった。
いまでも妙にまざまざと思い起こすことができる

アイリスから助け起こされ、まるで少女のように頬を赤らめるセージ。
潤んだ瞳___まぶしげにアイリスを見上げる______


「・・・・・セージに電話番号教えたのか?」


「___ええ、先日大学でばったり出会って・・・その時に聞かれましたので・・・・」





「いけませんでしたか?」







先ほどまで興奮と熱を持っていた体がしんと静まるのがわかった

聞かれたから番号を教えただと・・・?
こいつは、この男は一体何を言っているのだ?

なぜそのことを言わなかったのだ
なぜ番号を教えたのだ

なぜ
なぜ
なぜ
なぜ



「てめぇ・・・・」







「勝手なことしてんじゃねぇよ!!」


「がっ・・・・・・!」


俺は携帯を思い切り地面に叩き付けると同時に奴隷を蹴りつけた





「屑野郎がふざけやがって!!てめぇにそんな権利はねぇんだよ!!!」


苛つく。苛つく。苛つく。苛つく。苛つく。苛つく。苛つく。苛つく。___吐き気がしてしまうほど。
アイリスがセージに電話番号を教えたこと
それが異常に腹立たしい


「あんたは何だ?
「あんたに・・・自由があるとでも思ってんのか!?

「あんたは人間じゃねぇ。モノだ。俺の所有物なんだよ!!
「それが、あんなクズと仲良くされたら俺の格が下がんだろ滓が!

「ちょっとはその足りない頭使って考えろ!!」



どうしてこんなに苛つくのか。わけがわからないほどの凄まじい怒りが抑えきれず
腹を殴り、顎を蹴り上げ、頬を張って___俺は奴隷をただひたすらに嬲った




「あんた、やっぱ放置決定。そこで一晩反省してな」


____息が切れてしまうほどひとしきり殴って。

ぼろ雑巾のようになった奴隷を何の感慨もなく眺めてから
俺はその場から立ち去ろうと踵を返す


「・・・・・どこへ・・・行かれるのですか?」

「あ?言うわけねぇだろ。自分で考えろ」

「・・・」




「・・・・あの人たちのところへは行かない方がいいですよ」

「は?あの人達って・・・?」

「陛下がいつも仲良くされている方たちのことです。」


一瞬誰の事だかわからなかったが
すぐにデレク達のことだと思い至った。


「別に・・・仲良くしているわけじゃねぇよ」

「そうでしょうか?まあ、それならよいのですが・・・・
「____あの方たちとはもう縁を切った方がよろしいですよ」


「はぁ!?なんでだよ」





「誰とつるもうが俺の勝手だろ!奴隷ごときに指図されるいわれはねぇっつーの!」

そう反発するとアイリスは軽くため息をついた。

「・・・・ですが・・・・」

「はっ、なんだよ
「あんたもしかして・・・・妬いてんのかァ?」

「そういうわけではありません」





「・・・・ただ___あの方たち・・・・あまり良い噂を聞きませんので」











____ああ、まただ。
またいつもの仏頂面

またあのアイリスに戻ってしまった。

まるで俺を見下しているかのような
まるで俺の価値を見定めようとしているかのような
あの怜悧な瞳


さっきまであんたは確かに俺のモノだったのに_____


とても屈辱的だった

なぜあんたにそんなことを言われなければならない
あいつらがクズだっていうのはわかりきったことじゃないか

自分はセージと連絡を取り合っているくせに・・・!






「うるせぇ!あんたは黙って繋がれてろよ。この薄汚い肉便器が!」


たまらず声を荒げ
ドアを蹴飛ばし、その場から走り去る

腹立たしくて、憎らしくて、アイリスの顔なんてもう、
見ていたくなかった______













「お友達は選んだ方がいいですよ・・・・陛下」



















腹に響く耳障りな音楽とやたら眩しいフラッシュ
人いきれと香水のにおい

誰もかれも頭が悪そうに笑っている




こんな安いカクテルと安い音楽で酔えるだなんて
お手軽だな

くだらない。

皆何が愉しくてこんな場所にいるのだろう
何が愉しくて笑っているのだろう




このクラブという場所は本当に退屈だ。
奴隷で遊んでいた方がよっぽど愉しい

今日だってあんなことがなければもっと奴隷で遊んでいたのに

あいつのせいでなにもかもが台無しだ


電源を切っておかなかった馬鹿な奴隷と___俺のモノに手を出そうとした





愚か者


「あ・・・あの、マオ君・・・」

「あ?」

「あ、あ、あの・・・」

「デ、デレク君たちがヴ、ヴィップルーム、用意したから
「き、き、き、き、てほしいって」





「へ~~ぇ、ヴィップルームか
「まあ、俺にはこんなシケたところよりもそっちの方がふさわしいな

「どこだ?案内しろよ」





「・・・・・・あ・・・・・う、うん。わ、わ、わ、わ、かった・・・・・」












セージに連れられて昏い通路を歩く
沈黙を気にしているのか、先ほどからこちらを覗ってくるセージの視線に
すべて無視を決め込んで歩いていると、やつは大きな扉の前でピタリと立ち止まった。




「あ、あ、あ、あの・・・・・」

「あ?」

「マ、マオ君と・・・・・ア、ア、アイリス君って・・・ど、ど、ど、ど、う、いう・・・・」


(・・・・へぇ____)


こちらから鎌をかけてやろうと思っていたのに
まさかセージの方から正々堂々聞いてくるだなんて。

俺は意外に思いながらも___その質問には答えず逆に聞き返した

「あんた、アイリスに興味あんのか?」

「え・・・」




「そ、そ、そ、そ・・・そんな・・・・・・っ!」

セージは頬をさっと朱に染め、首を振って否定した
わかりやすすぎるその反応にうんざりしてしまう

ばっかじゃねぇの
あんなのド変態のどこがいいんだか


「そっかあ・・・あんたああいうのがタイプなんだな」




「____でも、残念だったな。あいつもう恋人いるみたいだぜ?」

「え・・・」

「俺はホラ、あいつの先輩だからさぁ、いろいろ知ってるわけよ。あいつのこと
「あれ、てか___知らなかったの?」

「し、し、し、しら・・・ない」

「なんだよ。あいつ、セージには話してなかったのか」




「はっ、信用されてねぇんだな。あんた

「あいつにとってあんたはその程度の存在ってことか」




「・・・・え・・・・・・・?」

「ああーそっか。勘違いしちゃうよなァ?あいつってさ、誰にでも優しいから。
「セージだけじゃないぜ?そういうのって。

「かわいそうになァ。イロイロ期待とかしちゃったんじゃないの?
「まあ、男同士でアレコレ期待しちゃうっていうのはどうかと思うけどーーー」


「!!!

「ち、ち、ちが・・・・・ぼ、ぼ、ぼ、僕は・・・・・!」




「ぼ、ぼ、僕は・・・・・・・・・っ」




「____まあ、とにかく、あいつのことは諦めろ。

「あいつはあんたのモノになんねぇよ。一生な・・・・・・」









砕いてやった
完璧に。

これでもうセージはアイリスに手を出そうなどとは考えないだろう

手を出されてたまるものか
あいつは俺の所有物だ

このマオ様がセージごときに玩具を横取りされるだなんて
あってはならない

俺の獲物を狙う輩は全員敵だ
俺は敵に手加減などしない。

骨まで砕いて、粉々にしてやる
完膚なきまでに叩き壊してやる

赦さない。絶対に___



俺はそう言い渡すと
まだ何か言いたそうにしているセージを無視してヴィップルームへの扉を開けた
















重い扉を潜り抜けると
室内には豪奢なシャンデリアと、見るからに高そうなソファ、贅を凝らした食事_____

などは一切なかったが、俺は思わず微笑んでしまった。


___だって















ヴィップルームなどとは程遠い
薄汚い部屋、だらしのない笑みを浮かべたガラの悪い男たち。

室内をぐるりと見回しただけで

俺がハメられたのだ、ということが一目でわかってしまったのだから




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